雛見沢に帰ってきてからの日々は光っていた。
ワシは知っている。楽しかった幸せな日々がある日突然終わってしまう事を。
興宮での美人局の片棒を担ぎながらリナの愛人として過ごす生活は、リナの突然の失踪により終わりを告げた。
「明日、火山の噴火で死んでも後悔しないよう、ワシは毎日を楽しく生きるんじゃ。」
雛見沢でワシは兄ィの義理の娘、沙都子と暮らす事にした。鉄平は兄ィとの約束を思い出したのだ。
「沙都子のことを頼む。」
沙都子はワシには懐かなかった。当然だ。1年もほったらかしにしていたのだし、かつてワシは家内が沙都子を虐待する事を止められなかったからだ。
それでもワシは家内の行動を咎め、そしてそれが原因で夫婦喧嘩をよくしていた。結果、家内は機嫌を損ねますます沙都子への虐待をエスカレートさせることになったのだが。
沙都子は直接虐待を加えた家内と同じくらいに、事態を悪化させる事しかできなかったワシを憎んでいるようだ。
それは仕方がない。受け入れよう。
1人者同士身を寄せ合い、同じ屋根の下でワシは保護者として沙都子と共に暮らすことを決意したのだ。
今は憎まれていようとも、いずれ沙都子も解ってくれるだろう。
雛見沢に戻ってきて一番最初にした事は、1年間放置されていた家の掃除だった。これがなかなかの重労働で沙都子と2人掛りで3日もかかってしまった。綺麗に片付けた部屋をもしも鉈を持った変質者にでも荒らでもしたらきっとワシは泣くだろう。
聞けば沙都子は豆腐は安い木綿しか食べたことがないという。ワシとて収入の無い身ではあったが、沙都子へ少しでも豊かな想いをさせてやろうと思い、引っ越し祝いとして絹ごし豆腐を食べさせてやることにした。
(中略)
ひさびさに揃った仲間と供にマージャンで大盛り上がり。沙都子は体調を少し崩していたが、仲間と遊ぶワシに気を使ってか一人で診療所に行くといいだした。
(中略)
楽しかった日々は一本の電話により突然終わることになる。
「もしもし、北条鉄平さんですか? 私、興宮署の前橋と申します。実は御宅の沙都子さんが・・・」
その日は綿流しの祭りの日。ワシは恐かった。奇しくも去年の綿流しの夜、ワシの家内は変質者に撲殺されていた。
それはオヤシロさまの祟りと噂されていた。そして今年の祟りはワシが選ばれるとも、そんな不穏な噂がワシの周りに流れていたからだ。
大事を取りワシはその日は祭りにも行かず、外出せずに家の中で息を潜めていようと思っていたのだが、そんな矢先にかかってきた電話だったのだ。
ワシは祟りを恐れた。そんなワシを心配してワシの仲間の1人が付っきりで家に一緒に居てくれたのだ。
電話口で警察署へ行くことを渋るワシを見たその仲間は、ワシの代わりに沙都子を引き取りにいくと申し出てくれた。ワシは仲間の好意を受け入れ、バイクを貸した。
仲間が家を出てから暫くして、沙都子がひょっこり帰ってくる。
「あれ?沙都子、ワレもう興宮から帰ってきたんかい?」
「何をおっしゃいますの叔父さま? 私はやっぱり叔父さまが心配でしたから魅音さん達とは神社の前でお別れをして早々に戻ってきただけでしてよ。」
・・・何かがおかしい。
KOOLになれワシ。不可解な事態に直面したワシは、状況を把握しようとし感覚を研ぎ澄ましてゆく。そして家の周りの気配に気付く。ワシは監視されている・・!?
その気配は今朝からずっと感じていた。つまりワシは今日一日ずっと監視されていた・・!?
(中略)
深夜になっても一向に仲間は戻ってこない。心配になったワシは輿宮署へ電話してみる。
北条鉄平の代理人は警察署へ来ていないという。更に驚くべきことに前橋などという警官も興宮署にはいないそうだ。
これは一体どういう事だ。
何者かがワシを嵌めようとしている?
何者かが嘘をつきワシを外へ誘き出し、消そうとした。
そしてワシの代わりに外へ出た仲間が消されてしまった・・!?
仲間の身の無事を祈りつつ、一晩中ワシはワシの今おかれた状況を考えていた。
今ワシの身に起こっていることはオヤシロさまの祟りなのか。
オヤシロさまの祟りと言えば、親しいものから順に消えていくという。
仲間が消えた。次に消えるのは・・・沙都子・・?
ワシがやっと眠りに落ちた頃には、東の空が既に白んでいた。
興宮でチンピラまがいの生活をしていた頃、ワシの生活リズムは狂いに狂っていた。
ワシはカタギの人間の生活リズムを取り戻すために、沙都子に学校へ行く前にワシを起こすよう頼んであった。
その日も沙都子はワシを起こしに来てくれたのだが、昨夜の寝不足のせいでつい口調を荒げてしまう。
沙都子は悲しそうな顔をして登校したいった。ワシはそれを見て再び眠りに落ちる。
昼過ぎに目が覚め、朝、沙都子にしてしまった仕打ちに後悔する。
しかし、これも親しいものから順に消されていくというオヤシロさまの祟りがワシに本当におこっていた場合の保険であった。
つまり、ワシは沙都子との距離を取り、沙都子の身の安全を確保しようとしたのだ。
これがワシのできる最善の対応だったのだ。
(中略)
夕方になり沙都子が帰宅し、夕飯を作ってくれた。テレビを見ながら食卓を囲む。
ふと、昔見た映画のワンシーンを思い出す。それは(略)
突如、味噌汁が異臭を放つ。臭い!とても飲めたモノではない!
ワシは怒りに任せそれを沙都子に投げつけ、暴言を吐く。
沙都子は泣かなかったが、無言のまま風呂に閉じこもってしまった。
毎日、質素ながら美味い手料理を作ってくれた沙都子が突然こんな臭い飯を出すのが信じられなかった。何かの間違いだと思いたかった。
風呂場へ向かう沙都子の顔を見た。今朝と同じく悲しそうな表情を浮かべていた。
繊細な年頃の女の子に向かって、匂いに関する暴言を吐いたワシは沙都子を深く傷つけてしまったらしい。
もしかしたら、沙都子はいつもと変わらない料理を作ったのかもしれない。おかしくなったのはワシの嗅覚かもしれない。
そんな考えが一瞬頭を過ぎる。しかし、あの味噌汁は臭かった。だがあの沙都子の表情は・・・。
ワシは何が正しいのか解らなくなってしまった。まるで心が引き裂かれてしまったかのようだった。
呆然と居間に立ち尽くすワシ。その時玄関の引き戸がガラリと開く音がして、ドカドカと複数の人間が家に入ってくる音が聞こえた。
ワシは理解する、この雛見沢にはオヤシロさまの威を借り、祟りを執行する村人がいるという事に。
ワシを監視していたのは彼らだったのだ。
そして直感する。ワシはこれから祟りを執行され、殺される、消されるのだ。
土足のままの足音はワシのいる部屋の間近まで迫っていた。
オヤシロさまの祟りは対象と親しいものから順に下されてゆく。
ワシは風呂場にいる沙都子へ聞こえるよう大声で叫んだ。
「こんダラズ!臭いんじゃあっ!いいか1万数えるまで風呂からでてくるなやっ!」
声は当然村人にも聞こえただろう。ワシと沙都子は仲が悪いと思ってくれただろうか。
家に押し入った十数人の男にワシは取り押さえられスタンガンを当てられ気を失った。
***
10年後
園崎家の地下から保護された、雛見沢大災害の唯一の生き残り北条鉄平と面会する大石と赤坂。
(中略)
「北条さん!聞こえていますか!」
北条鉄平の時はあの日から止まったままだった。
「これって・・・・ 最後まで読んでくれる人、いるのかな・・・」
あとがき初めてSSっぽいものを書きました。ショートストーリーというより、設定の羅列のような。だってSSなら(中略)とかしちゃいけねーよww
難しいモンですね。誰視点で書けばいいのか解らなくなったり、心情の描写とか統一感がなかったり。勢いだけで書いちゃいけないですな。でも、書きたいことを書けたので満足。
リナが失踪した事を不審に思った鉄平が兄ィとの約束を思い出せず復讐に駆られ、園崎家に殴り込み黒幕を探し出そうと暴走する「祟滅し編」なんてのも考えたり。